しかも、首都圏を中心とした大都市での高齢化の進行によって、日本の経済と財政はこれからさらに悪化する。
この問題に関しては、日本の第一人者で、元大蔵省主計官・政策研究大学院大学教授の松谷明彦先生の最新著『人口減少時代の大都市経済』(東洋経済新報社)を読むことをお勧めしたい。
首都圏では、今後20年間で生産年齢人口が2割減少する一方、高齢者が8割近くも増加するからだ。
そうなると、消費も税収も保険料収入は激減するが、高齢者のための社会保障支出や医療介護施設などのコストは激増し、首都圏の自治体の財政は破綻が予想される。
一方、島根県などの地方では、高齢化は既に進行しているため、影響は比較的に軽微だ。
今後、首都圏が、全国を富で潤す「富士山」から巨大な支出が必要な「ブラックホール」に変わると、戦後日本のビジネスモデルは崩壊し、首都圏も地方も共倒れになる。
消費税増税はできない
財政再建の切り札、と良識ある多くの人が考えているのは消費税増税だ。しかし、松谷教授によれば「消費税の増税は財政と社会の崩壊を早めるだけ」なのだ。
なぜなら、消費税増税は首都圏の経済活動を一層低下させる。そして、現役世代の首都圏脱出を促し、地方の若者の首都圏への流入を思いとどまらせる。首都圏の現役世代はさらに減少し、財政悪化を早める。
だから、消費税増税は不可能になる。その時は、年金も維持不能だ。東京一極集中の国土と経済の構造を、地方に分散し地方から成長する構造に転換するしかなかったのだが、もう間に合わない。
そもそも、年間9.6兆円しか税収がない消費税のフローを2倍にするだけでは、1000兆円を超える政府部門債務のストックは解消できない。