下落が始まれば、国債はどこまで下がるのだろうか。例えば、金利が1%上昇すれば国債インデックスの価格は5.5%下落する。
1970年代末に代表銘柄の「ロクイチ国債」は3割暴落した。当時は、国債の残高は小さかったから暴落の影響は小さく、1980年代の成長と税収の伸びで財政は再建された。
しかし、現在、政府の借金はGDPの2倍に達し、今後、未曾有の人口減少・高齢化と経済衰退が予想される。それなのに、日本国債の価格は史上最高だ。下落幅の予測が難しい。
仮に国債が3割下落すれば、日本の金融機関や年金には200兆円近い損失が発生する。多くの金融機関が破綻するだろう。
とりわけ暴落に弱いのが、国債の最大の保有者であるゆうちょ銀行だ。資産の9割近くを国債で(総額160兆円も)運用しているうえ、現金は5兆円ほどしかなく、自己資本(自己資本に組み入れた国債分を除く)も8兆円しかない。
国債が値下がりすれば、すぐに自己資本不足に陥る。いったん、ゆうびん貯金の解約が大量に起きれば現金が底を尽き、国債を売る以外に解約に応じる資金が捻出できない。
しかし、大量の国債売却を実行すれば、さらなる国債暴落を呼び手持資産が減少し、貯金が払い戻し不能になり破綻するだろう。「ゆうちょショック」の発生だ。
筆者が2005年の郵政特別国会の最初の参考人として指摘し、別の会合で当時の生田正治総裁が「その通りのリスクがあります」と筆者に答えた構造的な問題だ。郵政民営化はこの根本問題を未解決のままだ。
そして、国債を70兆円持つ、かんぽ生命も経営危機に陥るだろう。このほかにも、国債を80兆円持つ公的年金も資産が大きく減少するはずだ。もちろん、民間の金融機関も、国債への集中度合いが高いところは、経営危機に陥るだろう。
金融機関の破綻は財政負担に直結する。個人向けの預貯金や保険・年金は一定限度まで政府が保証している。損失を政府が肩代わりするのだから、仮に国債が3割下落すれば、100兆円を超える財政負担が新たに発生するだろう。