実は「情報」は、多次元ネットワーク社会に一足先に移行している。これから電気やエネルギー、食料、水のネットワークも作られるだろう。こうした物質の循環に加え、やがては人の移動、人間の暮らし方や都市の在り方が変わるという巨大な流れが始まっている。
その起点として、太陽経済を生む制度的な大きな枠組みが出来上がってきたのが、冒頭に紹介した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」である。
今後、内在する様々な問題や限界、社会全体の中で調和の問題なども出てくるだろうが、少なくとも言えるのは、今日本にとって巨大なチャンスが生まれているということだ。
チャンスとは何か。日本は、これまで培ってきたものづくりや科学技術に加え、クリーンテックの分野でも大いに知的財産を持っているではないか。代替エネルギーにおける日本の特許数は、世界の5~6割を占める。
しかし産業化することにおいては、日本のシェアはいまだごく少ないという。専門家や研究者、企業、大学のもとで蓄積した日本の技術を、今こそ実用化すべきだ。それぞれ孤立をしていたものを有機的に結合し、ネットワーク化していくことによって、日本が様々な問題を解決できるはずである。
一見飛躍して見えるけれども、それは将来例えば過密と過疎、少子高齢化、経済の成長の鈍化、人間の生き方といった問題の解決につながる。もちろんエネルギー、食糧、水、安心・安全と環境の問題も同様だ。
つまり人間の持続可能性、社会の持続可能性、国土の持続可能性、さらには地球の持続可能性にまで行きつくまでの大きなステップを、日本が踏み出すチャンスが来ている。
いよいよ「地域における循環」「地産地消」を、地域から日本へ、アジアへ、世界へ発信していく経済体系を作れるようになる。その先にあるのは、「地方から成長する日本」という新たな姿だ。
今まで地方で見捨てられていた国土が生まれ変わる。今まではわずかな臨海部の大都市でしか日本の経済成長はないと思われていたが、これから国土のほとんどに自立、成長が生まれていくだろう。
不動産・土地といった国土的な要素と、日本人が営々と蓄えてきた投資や技術を合わせて活用した地域こそが、持続的な成長をしていくことができるようになる。
今までの田舎のイメージは、お金があっても預けたきり。土地があってもタダ同然。子供がいても出ていったきり帰ってこない。それが当たり前だと皆思っていた。
このような田舎像を劇的に転換させて、日本はこれから地方から伸びていくだろう。しかし江戸時代のような、閉鎖された封建時代の分散社会に戻るのではない。多次元ネットワーク社会になるのである。