くにうみの先見

国土面積当たりの道路密度は先進国の中で日本が一番多い

高速道路の借金返済に充てた残りは、環境技術の開発などに使ったらどうでしょうか。日本の自動車は、ハイブリッド車などエコ技術では世界一です。

また、自動運転や衝突回避などの安全技術も世界最先端です。しかし、社会システムの整備は遅れています。ガソリン消費が少なく排ガスがない車や交通事故を起こさない車が日本社会に普及するために予算を使えば、21世紀も日本は世界一の自動車大国の地位を保てるでしょう。

このように、財源だけ見れば全国すべての高速道路の無料化が可能です。しかし、首都高速や阪神高速を無料にすれば、渋滞がひどくなるでしょう。そこでオプションもあります。

欧米の一部で実施されているように、混雑緩和のために大都市部だけは料金を取ったり、時間や混雑に応じた料金の徴収をするロードプライシングを行ったりすることです。もちろん、料金は財政収入になります。

首都高速と阪神高速の料金収入は年間4300億円程度ですから、日本全国の高速道路における年間管理費5900億円の8割強をこれだけで賄えます。もちろん、今検討されている阪神高速での料金の大幅な値上げは必要ありません。

高速道路無料化は道路だけでなく、交通のあり方、さらには、どこで仕事をし、どこに住むか、という国土のあり方を変えていきます。小泉さんが言う通り、日本の道路は、過疎地域や首都圏環状道路などを除けば、全体としてはもう十分あります。

日本は、国土面積当たりの道路密度はOECD(経済協力開発機構)諸国の中でナンバーワンです。日本に道路が足りない、というのは国際的には唖然とする主張です。

それなのに、日本の年間道路予算はドイツ、英国、フランス、イタリア4カ国の道路予算の合計の2倍です。ドイツ、英国では、その予算の中から高速道路の建設もメンテナンスも行っていますから料金は無料です。特に英国の道路予算は年間8000億円程度に過ぎません。

問題は、日本の道路が有効に使われていないことです。大都市の渋滞で車は排ガスをまき散らし、ガソリンと時間が空費されます。一方、地方の道路はやたら空いています。

そして、ムダの最たるものが高速道路です。バカ高い通行料金を取るから東京湾アクアラインも本四架橋もガラガラです。おかげで、料金が安いフェリーが四国と関西の間で復活しています。

何のために本四架橋を作ったのか分からなくなりました。北海道や東北の高速道路も使う人は稀です。住民は無料の一般道路を使います。観光客も、例えば往復5000円も出して盛岡から十和田湖まで高速道路を使おうという人はあまりいません。

かくして日本の道路は、国土の3%に過ぎない大都市ではドロドロ、残りの97%の国土ではスカスカというきわめて不健康な姿になっているのです。

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